損益計算書(P/L)を見ることで、会社が稼いだ利益、かかった費用などを、すべて詳しく見ていくことができます。
損益計算書を見ていく前に確認しておくべきは、「純利益」という言葉の意味です。
会社が最初に稼ぐことになる総収入(売上高)というのは、そのまますべて会社の利益になるわけではありません。
その総収入を得るまでにかかったあらゆる費用をひいていくことで、ようやく本当の意味での利益というのが算出されます。
総収入からすべての費用をとりのぞいた利益、それが純利益です。
損益計算書では、売上高から5段階で費用をぬいていき、最終的に「当期純利益」という形で純利益を算出します。
<売上高から段階的に費用をぬいたときの利益の名称>
売上高(最初の見た目の収益)
売上総利益
営業利益
経常利益
税引前当期純利益
当期純利益(最終的な会社の利益)
当期純利益がプラスになればその会社は黒字ですし、マイナスになれば赤字です。
数値は億円単位とします。
項目名 | 金額 | 計算式 | |
---|---|---|---|
A | 売上高 | 300(+) | |
B | 売上原価 | 100(-) | |
C | 売上総利益 | 200 | A-B |
D | 販管費 | 175(-) | |
E | 営業利益 | 25 | C-D |
F | 営業外収益 | 5(+) | |
G | 営業外費用 | 3(-) | |
H | 経常利益 | 27 | E+F-G |
I | 特別利益 | 2(+) | |
J | 特別損失 | 5(-) | |
K | 税引前当期純利益 | 24 | H+I-J |
L | 税金 | 6(-) | |
M | 当期純利益 | 18 | K-L |
利益のプラスになる「収益」は、売上高・営業外収益・特別利益の3つがあります。
いっぽう、利益のマイナスとなる「費用」は、売上原価・販管費・営業外費用・特別損失・税金の5つ。
そして結果的に計上される「利益」は、売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益の5つです。
また、各利益ごとに指標があります。
計算式・大雑把な理想(業種差あり) | |
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売上総利益率 | 売上総利益÷売上高×100(%) 50%以上 |
売上営業利益率 | 営業利益÷売上高×100(%) 7%以上 |
売上経常利益率 | 経常利益÷売上高×100(%) 7%以上 |
売上税引前当期純利益率 | 税引前当期純利益÷売上高×100(%) 7%以上 |
売上当期純利益率 | 当期純利益÷売上高×100(%) 6%以上 |
それぞれの利益を売上高で割るだけの単純な計算です。
一応目安の%を書きはしましたが、これらの数字の良し悪しは、同事業の平均値や同事業他社の数値との比較で決まります。
平均値は事業によって、季節ごとにも異なってきますので、よく調べましょう。
● 最新の業種ごとの平均の売上当期純利益率(参考)
損益計算書は、優先順位の高い順に費用がならべられており、株主への配当金の優先順位は、もっとも低いです。
また売上が増えても、売上高に対して純利益というのは6%前後の数字が基本です。
損益計算書も他の指標同様、期間ごとに並べて比較するのが重要です。
企業の調子をよく見ることができます。
以下、利益の種類ごとに紹介していきます。
会社の総収入です。
そのまま会社の事業規模をあらわす、と言って良いでしょう。
売上高から売上原価をひいた時点での利益です。
粗利益(あらりえき)とも言います。
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<売上総利益・上記の表の例>
売上高 | 300億円(顧客からの収益) |
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売上原価 | 100億円(取引先への費用) |
売上総利益 | 300億円-100億円=200億円 |
売上総利益率 | 67% |
売上原価とは製造原価・仕入原価といった、商品・サービスの売上に直接かかわる費用のことです。
メーカーであれば製造原価。小売業であれば仕入原価。
製造原価の場合には、人件費や設備の減価償却費なども含まれます。
業種にもよりますが、基準として売上総利益は売上高の50%以上はほしいところです。(売上総利益率50%以上)
この数字が良いほど倹約していて、消費者に良質な商品を提供できていることになります。
また逆に、売上総利益率が業種平均数値より悪い会社の特徴としては、価格競争に巻きこまれている、商品構成が悪い、仕入れ方法が悪い、などの点があげられます。
売上総利益から販売費および一般管理費(販管費)をひいた時点での利益です。
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<営業利益・上記の表の例>
売上総利益 | 200億円 |
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販管費 | 175億円(社員への費用) |
営業利益 | 200億円-175億円=25億円 |
売上営業利益率 | 8% |
会社の本質的な実績を分析する上で、営業利益は5つの利益の中でも一番重要視されます。
これはこれ以降の経常利益・税引前当期純利益・当期純利益では、本業以外の経済活動がかかわってくるためです。
また営業・運送・管理などのコストを売上原価に含めるのか、販管費に含めるのか、会社によってまちまちだったりしますので、そうした意味でも他社との比較のさいには、売上総利益よりは営業利益を使うほうが確実です。
販売費および一般管理費は販管費・営業経費とも言われ、ストレートに言ってしまえば、人件費、交際費、給料、福利厚生費、家賃、光熱費など、主にその会社につとめている人の生活費にかかわってきます。
売上総利益率が50%以上推奨なのに対し、売上営業利益率は平均的に5%~7%もあれば優良とみなせます。(もちろん季節・業種・状況によって平均は変わります)
この営業利益の算出で、ずいぶんと収益も削れていく、というわけです。
売上営業利益率が悪い会社の例としては、業務や経費に無駄がある、人員が多すぎる、などの要素があります。
ただここでやみくもに被用者をリストラする経営者は、事業をあまり拡大する気がない、ということでもあります。
リストラする会社よりは、その人員の多さを利用して新しい事業を展開する、などのポジティブな会社のほうが、被用者にとっても投資家にとっても、好感が持てますね。
また、売上営業利益率が業種平均数値より低いのに、人件費や広告宣伝費が多い会社は、良い株とは言えません。
営業利益に営業外収益をたし、さらに営業外費用をひいた時点での利益です。
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<経常利益・上記の表の例>
営業利益 | 25億円 |
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営業外収益 | 5億円(投資・銀行からの収益) |
営業外費用 | 3億円(投資・銀行への費用) |
経常利益 | 25億円+5億円-3億円=27億円 |
売上経常利益率 | 9% |
経常利益では副業的な要素がかかわってきます。
ありていに言ってしまえば投資による差損益、銀行の利子です。
会社も投資家同様、投資をしますので、その結果として営業利益と経常利益に差がでることになります。
この経常利益をもって、その会社の通常(経常)の利益が算出されるわけです。
営業外収益 → 受け取り利子、株の差益、為替差益、不動産収入など
営業外費用 → 支払い利子、株の差損、為替差損、社債利息など
副業による利益結果ですから、正直本業が稼げていれば、こちらの経常利益は変化がなくても問題ありません。
むしろ営業利益が低いのに経常利益の変化が著しいと、本業がおろそかになっている、とも読めます。
売上経常利益率が業種平均より低い会社の特徴としては、財務状態が悪い、つまり自己資本比率が低すぎて、財務レバレッジの高すぎる会社などです。
詳細は以下より。
経常利益に特別利益をたし、さらに特別損失をひいた時点での利益です。
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<税引前当期純利益・上記の表の例>
経常利益 | 27億円 |
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特別利益 | 2億円 |
特別損失 | 5億円 |
税引前当期純利益 | 27億円+2億円-5億円=24億円 |
売上税引前当期純利益率 | 8% |
税引前当期純利益は会社の臨時的な利益、損失にかかわります。
そのときの利益・損失を特別利益、特別損失と呼びます。
こちらもまた経常利益同様、主には投資や自社ビル・不動産の差損益などが対象です。
その他には火災・震災による損害、社員の退職金なども特別損失にかかわってきます。
経常利益以上に、税引前当期利益が大きく変わる会社は、経営に問題があると考えられます。
売上税引前当期純利益率が業種平均より低い場合は、災害などの要素を吟味します。
特に災害がなければ、特別損失を利用した営業利益の粉飾をしている可能性もあります。
こうした会社の株への投資はご法度です。
税引前当期利益から税金をひいた時点での利益です。
これが会社の最終的な結果としての利益になります。
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<当期純利益・上記の表の例>
税引前当期利益 | 24億円 |
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税金 | 6億円(国への費用) |
当期純利益 | 24億円-6億円=18億円 |
売上当期純利益率 | 6% |
この当期純利益からいわゆる株の配当金が作られ、私達投資家の取り分となります。
また残った純利益は、内部保留の余剰金となります。
ちなみに税金は法人税、住民税、事業税などが該当します。
2014年時点で、日本の法人税は40%前後ですので、税引前当期純利益から40%をひいた額が、ほぼそのまま当期純利益になります。
タックスヘイブン政策と呼ばれる企業誘致政策によって、年々世界中で、法人税は減少傾向です。
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