貸借対照表(通称バランスシート・B/S)を見ることで、その会社のお金の状態を把握することができます。
まず大前提として重要なことは、会社の活動資金である「資産」というのは、すべてどこかから借りてきたお金である、ということです。
そのお金を借りてくる元手は、ふたつあります。
ひとつが「負債」で、もうひとつが「資本」です。
ですので、かならず以下のようになります。
資産=負債+資本 |
負債というのは、私達が借金やローンをくむときと同じものです。
会社もどこかからお金を借りるときには、金利をつけてあとで貸主に返済します。
いっぽう資本は、私達投資家が株を買うことによって、会社が得たお金です。
500円の株を1万株発行してすべて売れれば、その会社はそのまま500万円の資本を手にいれることになります。
資本も厳密には、私達投資家からお金を借りている状態ですので、借金の部類です。
ただし負債と資本には、以下のような違いがあります。
<会社の借金の種類>
借りる敷居 | 借りてくる相手 | 返済義務 | 対応証券 | |
---|---|---|---|---|
負債 | 低い | 金融機関 | ある | 債券 |
資本 | 高い | 投資家 | ない | 株 |
負債は借りるのが楽なかわりに、稼ぎの大小にかかわらず、会社は融資機関に金利をはらいつづけ、最終的に借金を完済する必要があります。
いっぽう資本は借りる敷居が高いです。
そのかわり、稼げていなければ返済の義務がありません。
会社が稼げているときだけ、会社は投資家たちに配当金などの形で還元します。
こうした違いから、しばしば資本を自己資本、負債を他人資本と呼んで区別します。
また、資本を純資産とも呼び、資本+負債を総資産(総資本)とも呼びます。
資産・純資産・総資産を混同しないように、気をつけましょう。
それぞれ意味が、まったく異なってきます。
数値は億円単位とします。
資産の部 | 負債の部 | ||
---|---|---|---|
流動資産 | 流動負債 | ||
現金・預金 | 70 | 買掛金 | 50 |
売掛金 | 60 | 未払金 | 30 |
固定資産 | 固定負債 | ||
有形固定資産 | 50 | 連結調整勘定 | 20 |
無形固定資産 | 10 | 資本の部 | |
投資その他の資産 | 10 | 資本金 | 50 |
資産合計 | 200 | 資本剰余金 | 30 |
利益剰余金 | 20 | ||
負債・資本合計 | 200 |
だいぶ大雑把ですが、貸借対照表は上記のような感じになります。
左側に資産。右側に負債・資本。
資産=負債+資本ですので、資産の合計と負債・資本の合計はかならず同じになります。
これが、貸借対照表がバランスシートと呼ばれる理由でもあります。
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特に資産と負債では、大きく流動か固定かという違いがあります。
これは簡単に言えば、すぐに動かせるお金(流動)か、すぐに動かすことのできないお金(固定)かの違いです。
<資産の部・用語説明>
流動資産 → 1年以内に現金化できる資産。現金、売掛金、受取手形、棚卸資産、有価証券などの項目が該当する。
売掛金 → すでに商品を売っているが、まだお金をうけとっていない状態の資産。
棚卸資産 → 将来出荷されることで値段のつく、在庫状態の資産。
固定資産 → 1年以上におよぶ、長期保有が前提となっている資産。有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産の3種類がある。
有形固定資産 → 土地、建物、機械、施設など、おもに不動産にかかわる資産。いわゆる減価償却(毎年少しずつ修繕などの費用を払う)にかかわる資産が多い。
無形固定資産 → 商標権、工業所有権、ソフトウェアなど、権利やデータを中心とした形のない資産。
投資その他の資産 → 長期におよぶ有価証券などの資産。
<負債の部・用語説明>
流動負債 → 1年以内に返さなければならない借金。買掛金、未払金、未払印税、短期借入金などの項目が該当する。
買掛金 → すでに商品を買っているが、まだお金を支払っていない状態の負債。
固定負債 → 1年以上先に支払う借金。連結調整勘定、社債、長期借入金、預り保証金などの項目が該当する。
連結調整勘定 → 会社が他の会社を買収するときその会社を高く評価し、相場(純資産)より高く買った場合のその差額。
<資本の部・用語説明>
資本剰余金 → 株によって得られたお金(資本金)から、いざというときのために引きぬかれた資本。
利益剰余金 → 企業が稼いだお金から、いざというときのために引きぬかれた資本。
貸借対照表を分析することで様々な指標がわかります。
中でも重要な指標として、自己資本比率、流動比率、当座比率の3つがあります。
計算式・推奨数値 | |
---|---|
自己資本比率 | 資本÷(負債+資本)×100(%) 30%~50% |
流動比率 | 流動資産÷流動負債×100(%) 130%~200% |
当座比率 | (現金+預金+売掛金)÷流動負債×100(%) 100%~180% |
自己資本比率は、負債(他人資本)に対してどの程度資本(自己資本)があるのかを示した数字です。
自己資本比率=資本÷総資本(負債+資本)×100(%) |
負債と資本をたすと総資本(総資産)となります。
この総資本で資本をわったのが、自己資本比率です。
設備など固定資産が多く必要になる企業では最低20%以上、流動資産が多い企業では最低15%以上が必要です。
自己資本比率が10%以下になる会社への投資は、さけるべきです。
上述の表だと、負債100億円、資本100億円。
100÷200×100(%)で、自己資本比率はおよそ50%です。
自己資本比率が低い会社は、負債が多くて倒産リスクが高いだけでなく、将来インフレによって融資の金利が上昇したとき、さらに多額のお金を返済する必要がでてくるため、注意します。
いっぽう、自己資本比率は高ければ高いほど良い、というわけでもありません。
前ページのROE・ROAの項目でも述べた、財務レバレッジに注意する必要があります。
自己資本比率が高すぎると、借金を会社の資金として有効活用できていないことになります。
この場合、利益をとりこぼしている会社の可能性が極めて高いです。
なのでオススメの自己資本比率は下限15%~上限60%、といったところです。
理想は30%~50%です。
なお、自己資本比率は財務レバレッジの逆数です。
ですのでROEとROAからも求めることができます。
<自己資本比率と財務レバレッジの算出法と理想>
自己資本比率=1÷財務レバレッジ×100(%)
自己資本比率=ROA÷ROE×100(%)
財務レバレッジ=1÷自己資本比率
財務レバレッジ=ROE÷ROA
理想の財務レバレッジ | 2倍~3倍 |
---|---|
理想の自己資本比率 | 30%~50% |
理想のROE | 10%以上 |
理想のROA | 5%以上 |
自己資本比率・財務レバレッジは、ROEやROAといった指標とあわせて使えば、非常に良いパフォーマンスを発揮します。
<高利回りかつ負債状態の安定した良質株の例>
ROE | 20% |
---|---|
ROA | 8% |
財務レバレッジ | 2.5倍 |
自己資本比率 | 40% |
なお、ROEとROAはどちらとも、高ければ高いほど良いです。
財務レバレッジや自己資本比率のように、ある上限をこえると悪質な株、ということはありません。
流動負債に対して流動資産がどの程度あるのかを表した数値が、流動比率です。
流動比率=流動資産÷流動負債×100(%) |
また、流動比率よりさらに安全性をはかれる数値として、当座比率があります。
当座比率=当座資産÷流動負債×100(%) |
当座資産とは、ひらたくいえば現金・預金・売掛金のことです。
流動資産を、さらに流動的なものに限定しています。
流動比率は120%以上、当座比率は90%以上が安定ラインとされます。
上記の表の場合は、現金・預金70億円、売掛金60億円しか流動資産がありませんので、流動資産=当座資産で合計130億円となります。
流動負債は80億円ですので、以下の計算に。
130÷80×100(%)=162%
流動比率および当座比率は162%です。
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流動比率と当座比率を使うと、短期的な安定性を考えることができます。
比率が低すぎて流動負債が返済できない状況になると、その会社はすぐ倒産してしまう可能性があるので、注意しましょう。
また流動比率・当座比率も高ければ高いほど良い、というわけではありません。
無駄に資金をそのまま死蔵しているだけ、ともとれます。
せいぜい流動比率については上限220%、当座比率については上限200%、といった数字が妥当でしょう。
理想は両者150%前後です。
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