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貸借対照表とは?
<投資でお金を稼ぐ方法・株マニュアル17>


貸借対照表(通称バランスシート・B/S)を見ることで、その会社のお金の状態を把握することができます。


貸借対照表の分析に入るまえに


まず大前提として重要なことは、会社の活動資金である「資産」というのは、すべてどこかから借りてきたお金である、ということです。

そのお金を借りてくる元手は、ふたつあります。

ひとつが「負債」で、もうひとつが「資本」です。

ですので、かならず以下のようになります。


資産=負債+資本


負債というのは、私達が借金やローンをくむときと同じものです。

会社もどこかからお金を借りるときには、金利をつけてあとで貸主に返済します。

いっぽう資本は、私達投資家が株を買うことによって、会社が得たお金です。

500円の株を1万株発行してすべて売れれば、その会社はそのまま500万円の資本を手にいれることになります。

資本=、負債=債券という捉えかたでもいいでしょう。


資本も厳密には、私達投資家からお金を借りている状態ですので、借金の部類です。

ただし負債と資本には、以下のような違いがあります。


<会社の借金の種類>

借りる敷居借りてくる相手返済義務対応証券
負債低い金融機関ある債券
資本高い投資家ない

負債は借りるのが楽なかわりに、稼ぎの大小にかかわらず、会社は融資機関に金利をはらいつづけ、最終的に借金を完済する必要があります。

いっぽう資本は借りる敷居が高いです。

そのかわり、稼げていなければ返済の義務がありません。

会社が稼げているときだけ、会社は投資家たちに配当金などの形で還元します。


こうした違いから、しばしば資本を自己資本、負債を他人資本と呼んで区別します。

また、資本を純資産とも呼び、資本+負債を総資産(総資本)とも呼びます

資産・純資産・総資産を混同しないように、気をつけましょう

それぞれ意味が、まったく異なってきます。


実際の貸借対照表の例


数値は億円単位とします。


資産の部負債の部
流動資産流動負債
現金・預金70買掛金50
売掛金60未払金30
固定資産固定負債
有形固定資産50連結調整勘定20
無形固定資産10資本の部
投資その他の資産10資本金50
資産合計200資本剰余金30
利益剰余金20
負債・資本合計200

だいぶ大雑把ですが、貸借対照表は上記のような感じになります。

左側に資産。右側に負債・資本

資産=負債+資本ですので、資産の合計と負債・資本の合計はかならず同じになります。

これが、貸借対照表がバランスシートと呼ばれる理由でもあります。


  • 右側(負債+資本) → 会社がどのようにお金を調達しているかの内訳

  • 左側(資産) → 会社がその調達したお金を現在どのような形で所有しているかの内訳


特に資産と負債では、大きく流動か固定かという違いがあります。

これは簡単に言えば、すぐに動かせるお金(流動)か、すぐに動かすことのできないお金(固定)かの違いです。


<資産の部・用語説明>

  • 流動資産 → 1年以内に現金化できる資産。現金、売掛金、受取手形、棚卸資産、有価証券などの項目が該当する。

  • 売掛金 → すでに商品を売っているが、まだお金をうけとっていない状態の資産。

  • 棚卸資産 → 将来出荷されることで値段のつく、在庫状態の資産。

  • 固定資産 → 1年以上におよぶ、長期保有が前提となっている資産。有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産の3種類がある。

  • 有形固定資産 → 土地、建物、機械、施設など、おもに不動産にかかわる資産。いわゆる減価償却(毎年少しずつ修繕などの費用を払う)にかかわる資産が多い。

  • 無形固定資産 → 商標権、工業所有権、ソフトウェアなど、権利やデータを中心とした形のない資産。

  • 投資その他の資産 → 長期におよぶ有価証券などの資産。


<負債の部・用語説明>

  • 流動負債 → 1年以内に返さなければならない借金。買掛金、未払金、未払印税、短期借入金などの項目が該当する。

  • 買掛金 → すでに商品を買っているが、まだお金を支払っていない状態の負債。

  • 固定負債 → 1年以上先に支払う借金。連結調整勘定、社債、長期借入金、預り保証金などの項目が該当する。

  • 連結調整勘定 → 会社が他の会社を買収するときその会社を高く評価し、相場(純資産)より高く買った場合のその差額。


<資本の部・用語説明>

  • 資本剰余金 → 株によって得られたお金(資本金)から、いざというときのために引きぬかれた資本。

  • 利益剰余金 → 企業が稼いだお金から、いざというときのために引きぬかれた資本。


貸借対照表を分析して算出できる指標


貸借対照表を分析することで様々な指標がわかります。

中でも重要な指標として、自己資本比率、流動比率、当座比率の3つがあります。


計算式・推奨数値
自己資本比率資本÷(負債+資本)×100(%)
30%~50%
流動比率流動資産÷流動負債×100(%)
130%~200%
当座比率(現金+預金+売掛金)÷流動負債×100(%)
100%~180%

(1)自己資本比率と財務レバレッジ


自己資本比率は、負債(他人資本)に対してどの程度資本(自己資本)があるのかを示した数字です。


自己資本比率=資本÷総資本(負債+資本)×100(%)


負債と資本をたすと総資本(総資産)となります。

この総資本で資本をわったのが、自己資本比率です。


設備など固定資産が多く必要になる企業では最低20%以上、流動資産が多い企業では最低15%以上が必要です。

自己資本比率が10%以下になる会社への投資は、さけるべきです。

上述の表だと、負債100億円、資本100億円。

100÷200×100(%)で、自己資本比率はおよそ50%です。

自己資本比率が低い会社は、負債が多くて倒産リスクが高いだけでなく、将来インフレによって融資の金利が上昇したとき、さらに多額のお金を返済する必要がでてくるため、注意します。


いっぽう、自己資本比率は高ければ高いほど良い、というわけでもありません。

前ページのROE・ROAの項目でも述べた、財務レバレッジに注意する必要があります。

自己資本比率が高すぎると、借金を会社の資金として有効活用できていないことになります。

この場合、利益をとりこぼしている会社の可能性が極めて高いです。

なのでオススメの自己資本比率は下限15%~上限60%、といったところです。

理想は30%~50%です。


なお、自己資本比率は財務レバレッジの逆数です。

ですのでROEとROAからも求めることができます。


<自己資本比率と財務レバレッジの算出法と理想>

  • 自己資本比率=1÷財務レバレッジ×100(%)

  • 自己資本比率=ROA÷ROE×100(%)

  • 財務レバレッジ=1÷自己資本比率

  • 財務レバレッジ=ROE÷ROA


理想の財務レバレッジ2倍~3倍
理想の自己資本比率30%~50%
理想のROE10%以上
理想のROA5%以上

自己資本比率・財務レバレッジは、ROEやROAといった指標とあわせて使えば、非常に良いパフォーマンスを発揮します。


<高利回りかつ負債状態の安定した良質株の例>

ROE20%
ROA8%
財務レバレッジ2.5倍
自己資本比率40%

なお、ROEとROAはどちらとも、高ければ高いほど良いです。

財務レバレッジや自己資本比率のように、ある上限をこえると悪質な株、ということはありません。


(2)流動比率と当座比率


流動負債に対して流動資産がどの程度あるのかを表した数値が、流動比率です。


流動比率=流動資産÷流動負債×100(%)


また、流動比率よりさらに安全性をはかれる数値として、当座比率があります。


当座比率=当座資産÷流動負債×100(%)


当座資産とは、ひらたくいえば現金・預金・売掛金のことです。

流動資産を、さらに流動的なものに限定しています。


流動比率は120%以上、当座比率は90%以上が安定ラインとされます。

上記の表の場合は、現金・預金70億円、売掛金60億円しか流動資産がありませんので、流動資産=当座資産で合計130億円となります。

流動負債は80億円ですので、以下の計算に。


130÷80×100(%)=162%


流動比率および当座比率は162%です。


  • 流動比率・当座比率が低すぎる → 負債を返済できないですぐに倒産の可能性

  • 流動比率・当座比率が高すぎる → 資金の死蔵で運用効率が悪い


流動比率と当座比率を使うと、短期的な安定性を考えることができます

比率が低すぎて流動負債が返済できない状況になると、その会社はすぐ倒産してしまう可能性があるので、注意しましょう。

また流動比率・当座比率も高ければ高いほど良い、というわけではありません。

無駄に資金をそのまま死蔵しているだけ、ともとれます。

せいぜい流動比率については上限220%、当座比率については上限200%、といった数字が妥当でしょう。

理想は両者150%前後です。


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