このページでは、円高と円安、そして為替レートについて、わかりやすく解説します。
外国の金融商品に投資するとき意識しないといけないのが、為替差損益です。
海外ETFやFXなどで外国の通貨・資産に投資しているとき、日本円が海外の通貨と比べて値上がり(円高)すれば損が発生し、逆に値下がり(円安)すると利益が発生します。
「1米ドル=100円」など、外貨の値段を自国の通貨の値段で表した数字を、為替レートといいます。
1970年代前の固定相場制時代は、1ドル360円で固定されていましたが、ニクソン・ショックによる1970年代の変動相場制以降、為替レートは常時変化しており、この変化によって、円高・円安の影響がわかります。
基本的に円高はデフレと、円安はインフレとセットです。
輸入は稼げて輸出が稼げない
日本の平均株価はさがり、債券価格はあがる
通貨価値があがり、国内製品の価格がさがる(デフレ)
資産家は得、労働者は損
円高の例 → 為替レートが「1ドル100円」から「1ドル80円」に変化する |
この場合、100円で買えた米国製ジュースが、80円で買えるようになります。
ただし100円の日本製ジュースを海外の人が買うときは、それまで100円に交換できた1ドルが80円にしか交換できなくなり、1.25ドル必要です。
0.25ドル余分に必要となるため、効率が悪くスムーズにはいかなくなります。
初心者が「円高」と聞くと「円が高いからそのぶん日本に住んでいる人がお得」という印象をうけがちですが、実際はそんなことはありません。
私達が普段、高い買い物にはあまり手をださないように、日本の円が高くなるぶん、海外の人々もまた、日本の商品に手をださなくなります。
なので結果、日本全体の平均株価がさがり、不景気になることが多いです。
輸出は稼げて輸入が稼げない
日本の平均株価はあがり、債券価格はさがる
通貨価値がさがり、国内製品の価格があがる(インフレ)
労働者は得、資産家は損
円安の例 → 為替レートが「1ドル100円」から「1ドル120円」に変化する |
この場合、100円で買えた海外のジュースを、120円で買うことになり、日本人が海外の物品を買うときには不利です。
しかし100円の日本製ジュースを海外の人が買うときには、0.83ドル程度ですむので、スムーズになります。
初心者が「円安」と聞くと「日本の価値がさがり、日本人は損をする」という印象がありますが、私達が普段高い買い物より安い買い物に着目するように、日本円が安くなれば、海外の人々はどんどん日本のものを買うようになります。
結果、日本全体の平均株価があがり、好景気になることが多いです。
円安、円高は相対的なものなので、本来「1ドル80円は円高」「1ドル120円は円安」という言い方はできません。
しかし過去10年の米ドル円レートを見ると、最高で1ドル120円、最低で1ドル80円程度なので、1ドル100円前後を行き来しています。
この10年に限って言えば、平均的に1ドル100円より高ければ円安、低ければ円高と言うことができます。
<過去10年間の米ドル円レート>
(画像はSBI証券より)
米ドル円レート(USD/JPY)以外のおおよその主要為替レートは、以下のとおりです。
<主要為替レートのおおよその数値>
2014年時点の レート | 過去10年間の レート | |
---|---|---|
ユーロ円(EUR/JPY) | 140円 | 100円~170円 |
英ポンド円(GBP/JPY) | 160円 | 120円~240円 |
豪ドル円(AUD/JPY) | 90円 | 60円~110円 |
NZドル円(NZD/JPY) | 80円 | 50円~100円 |
ブラジルレアル円(BRL/JPY) | 45円 | 35円~70円 |
南アランド円(ZAR/JPY) | 10円 | 8円~18円 |
香港ドル円(HKD/JPY) | 13円 | 10円~15円 |
カナダドル円(CAD/JPY) | 100円 | 70円~120円 |
スイスフラン円(CHF/JPY) | 115円 | 75円~115円 |
トルコリラ円(TRY/JPY) | 50円 | 40円~100円 |
ロシアルーブル円(RUB/JPY) | 3円 | 2円~5円 |
ユーロ米ドル(EUR/USD) | 1.4ドル | 1.2ドル~1.6ドル |
たとえば「ユーロ円」なら1ユーロ140円、という意味です。
またFXなどでは、ユーロ米ドル(EUR/USD)のように、外貨で別の外貨を買うこともできます。
これを外貨クロス取引といい、その為替レートをクロスレートと言います。
インフレ・デフレと同じように、円高・円安、それぞれどちらが良くてどちらが悪い、ということはありません。
それぞれにメリット・デメリットがあるので、社会の変化に応じて、柔軟に自分の資産状態を変化させることが重要です。
とはいえ、日本の多くの人々(労働者)にとっては、円安のほうが良い、ということが多いです。
労働者をひとつの商品として考え、労働力に値段をつけるのなら、円安というのは「輸出のしやすい状態=海外に日本製の労働力が売れる状態」なので、雇用は比較的によくなります。
実際1970年以前の高度経済成長期で、1ドル360円の固定相場制の円安時代には、労働者達(現在のお年寄りたち)は、それで大量のお金を稼いでいます。
それに比べて現在は円高傾向なため、国際社会時代では誰も日本の値段の高い労働者を雇用(購入)しようとはしません。
なので、日本の労働者の多くは稼げないわけです。
貨幣価値の高い状態では、基本的に資本家と労働者の対立という、資本主義社会独特の図式が濃厚になります。
特に円高が極まったのは、2008年のサブプライムローン問題・リーマンショック時で、このとき日本円は避難用貨幣として見なされ、あらゆる外国人が日本円を買ったので、急激な円高に襲われました。
その一方で、日本が食料の多くを海外からの輸入に頼っている点を考えると、労働者にとっても、円高のほうがいいという側面があります。
これは円高であれば外貨の価値が安いので、海外の食品も安くなって、買いやすくなるためです。
基本的には円高も円安も一長一短なのだと考えてください。
貨幣価値は極めて相対的なものです。
円安ならそれは同時にドル高、ユーロ高であるということですし、円高ならドル安、ユーロ安ということになります。
現在の中国やインドのように、貨幣価値が安くて雇用がよくなる国がでてくる一方で、日本などのように貨幣価値が高くなることで、雇用が悪くなる国もでてきます。
基本的にこうして国・貨幣間で優劣をつけるのは、かつてのブロック経済のなごりです。
私自身は本来、こんな風に混乱や差別の種となる貨幣価値の差は、なくなるべきとも思っています。
価値を提供できる人間がお金を稼げる、という風に、もっと国際社会化・資本主義を追求するのであれば、為替レートという発想自体が不健全です。
ひとえにそれは、円安(インフレ)や円高(デフレ)によって、国全体の価値が一蓮托生となっており、社会主義的な側面をおびているように、私には感じられるからです。
為替レートをなくす対策ははっきりしており、ヨーロッパ圏が共通貨幣のユーロを作ったように、世界で共通に使える通貨を作ることです。
しかしどの国も保身に走り、世界の経済格差がなかなかなくならない以上、実現は数百年以上、先になりそうです。
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