信用取引とは、ひとことで言ってしまえば「自分を証券会社に信用してもらい、持っている資金以上に株式投資をすること」です。
自分の資金(証拠金・保証金)や、すでに持っている株(有価証券)などを担保(こちらが将来お金を返せるという保証)にして、証券会社からお金・株を借りて投資することになります。
信用取引を使うことで、以下の2つのことが株でできるようになります。
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FXと似た取引になりますが、信用取引の場合、金利などの費用が多くかかることから、融資に近くなることに注意が必要です。
「株価がさがっても稼げる」という複雑な構造になっているので、性質上、信用取引は株初心者にはオススメできません。
よく仕組みを理解してから使うようにしましょう。
また信用取引をする場合、各証券会社でふつうの証券口座を開設後、さらに信用取引口座を開設する必要があります。
FX口座同様、開設は有職者や資産のある人に限定されるなど、敷居が比較的に高めなので注意します。
たとえば通常の株取引(現物取引)では、50万円しか持っていなければ50万円ぶんの取引しかできません。
しかし信用取引ではレバレッジをかけれるので、3倍の150万円ぶんまで取引することができます。
3倍までレバレッジをかける場合、もちろんリスクも3倍増しとなります。
また2014年時点で、FXでは25倍までレバレッジをかけれますが、株の信用取引では3倍までしかかけれないことに注意します。
売りポジションとは信用売り・空売り・売建玉・売建て・ショートのことです。
基本的に株というのは会社の持ち物ですから、最初に私達から誰かに株を売ることはできません。
ですので現物取引では株を買うことからはじめることしかできず、株価があがったときにしか利益をだせません。
しかし信用取引では、会社から株を借りることで、それを売ることができます。
つまり、株価がさがったとき(下落相場)でも利益をだすことができます。
また現物取引と同じように信用取引でも、普通に株を買うことがもちろんできます。(信用買い・空買い・買建玉・買建て・ロング)
ただし、信用取引で買いポジションだけを使うなら、それなりの戦略が必要です。
通常は、手数料負けするおそれのない現物取引を使うべきです。
なお売りポジションを使う場合、株価があがるともちろん差損になります。
株価は無限にあがる可能性があるため、差損もまた上限がないことに注意しましょう。
これは損切りのための逆指値注文をしておくことで、解消できます。
<株価がさがることで稼ぐ方法の例>
たとえば株価1000円の株を100株、証券会社から借りたとします。
その株を、信用取引で全部売ります。
すると1000円×100株なので、10万円が手に入ります。
やがて株価が800円までさがったとします。
このときに100株を買いもどすと、8万円かかります。
その100株を証券会社に返すことで、信用取引は終わります。
この場合、株を売ったときに10万円手にいれ、買い戻すときに8万円使っているので、2万円が利益となります。
信用取引では、こうして株価がさがったときでも、利益を得ることができます。
信用取引はさらに制度信用取引と一般信用取引の2つに分類できます。
基本的な違いは、以下のとおりです。
制度信用取引 | 一般信用取引 | |
---|---|---|
返済期間 | 6か月以内 | 無期限 |
手数料 | 安い | 高い |
売建 | できる | できない |
銘柄の数 | 少ない | 多い |
信用取引には返済期間があります。
買方の場合は融資、売方の場合は貸株となりますので、それぞれお金・株を期限内に証券会社へと返却します。
一部の例外をのぞき、一般信用取引では売りポジションが不可能です。
ですのでオススメできるのは、売りポジションの使える制度信用取引です。
手数料が安いのもウリです。
ただし一般信用取引と比べて、商品数が少ないことに注意します。
一般信用取引では取引できる銘柄も、制度信用取引ではできない銘柄ということがしばしばです。
まず現物取引同様、普通の取引手数料がかかります。
しかし現物取引と比較して、信用取引の取引手数料は安いことが多いです。
以下はそれぞれSBI証券と楽天証券での、1回の信用取引につきかかる取引手数料です。
<SBI証券(スタンダードプラン)の取引手数料>
取引額 | 手数料 |
---|---|
20万円以下 | 150円 |
50万円以下 | 200円 |
50万円以上 | 378円 |
5000万円以上 | 無料 |
<楽天証券(ワンショットコース)の取引手数料>
取引額 | 手数料 |
---|---|
30万円以下 | 262円 |
30万円以上 | 472円 |
この取引手数料に追加して、信用取引ではさらに、以下の手数料・費用がかかります。
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すべての手数料が、いつも必ずかかるわけではありません。
名義書換料は、買建玉保有者が支払う可能性のある手数料です。
また逆日歩(ぎゃくひぶ)と配当金相当額は、売建玉保有者が買建玉保有者の人に支払う可能性のある手数料です。
逆を言えば買建の人は、逆日歩や配当金相当額で稼ぐ機会があります。
逆日歩と配当金相当額については、優待取りのページでも書いています。
信用取引で毎回かかる実質的な手数料としては、取引手数料と管理費、そして買いポジションは金利、売りポジションは貸株料、ということで抑えておきます。
<信用取引の手数料比較>
金利(買建手数料) | 貸株料(売建手数料) | |
---|---|---|
SBI制度 | 2.80% | 1.15% |
SBI一般 | 3.09% | 扱いなし |
楽天制度 | 2.85% | 1.10% |
楽天一般 | 3.09% | 扱いなし |
%は年利計算なので、実際は365で割った手数料が1日ごとにかかる
管理費は共通で、売買単位100株の場合は1か月ごとに1株10.5銭(売買単位1株なら105円)
名義書換料は共通で、1売買単位につき52.5円
逆日歩・配当金相当額は不定
金利と貸株料で一番注意すべきは、毎日かかるということです。
普通の取引手数料は一回はらえば、いくらポジションを長いあいだ持っていてもコストに変化はありません。
しかし信用取引では、ポジションを持っている日が長いほどコストもかさんでいくことに注意します。
松井証券では一日信用取引と呼ばれるシステムがあり、これを使うと、手数料が安くなることが多いです。
特に300万円以上の取引をすると、取引手数料や金利・貸株料など、すべての手数料・費用が完全無料です。
SMBC日興証券についても、取引手数料だけは完全無料です。
ライブスター証券も比較的に安めの手数料です。
金利が安いのはむさし証券ですので、長期間ポジションを継続したい場合には、むさし証券がオススメです。
信用取引のメリットとして、レバレッジを使えば多かれ少なかれお金の節約になる、ということがあります。
結果的に信用取引であまったお金は、別の投資に使うこともできます。
しかしその一方で、上述のような手数料が高くつくことがあります。
信用取引では、手数料負けしないよう注意しましょう。
信用取引では信用残(買い残・売り残)と呼ばれる数値があります。
これはそれぞれ信用取引で、買いポジション・売りポジションを保有している人の総数を表します。
買い残が多ければ株価上昇を見込んでいる人が多く、売り残が多ければ株価下降を見込んでいる人が多い、ということになります。
取組倍率(信用倍率・貸借倍率)は「買い残÷売り残」の数字です。
買い残が多ければ1倍以上になります。
テクニカル分析上、取組倍率はあがりすぎれば反動でさがり、さがりすぎればまた反動であがる、を繰り返すのが基本です。
また前週比を見れば、買い残・売り残の数字の推移がわかります。
信用取引を使った戦略として、以下のようなものがあります。
<優待取り>
株の第二のインカムゲインである株主優待を、タダ取りする方法です。
詳細は以下のページで解説しています。
● 優待取りについて
<逆日歩取り>
信用買いをおこなって、前述の手数料のひとつである、逆日歩で稼ぐ方法です。
逆日歩は信用売りが増えて貸せる株が少なくなることで、バランス調整のために発生します。
この場合、売建玉保有者は買建玉保有者に、レンタル代という形で手数料を支払います。
こうした状況では、信用買いによって逆日歩で稼ぐことができます。
特に規模の小さい会社の株であれば、信用売りが多くなると逆日歩も高くなります。
株価の1%以上の逆日歩がつくこともあり、この場合は50万円ぶんの信用買いで、1日あたり5000円以上もらえます。
また信用売りが多くなる優待取りを逆手にとって、信用買いしておくことで大量の逆日歩を稼げる可能性もあります。
その他、つなぎ売り・両建てといった戦略もあります。
また信用取引は性質上テクニカル分析による売却益が狙いやすいので、株のデイトレードでもよく使われます。
以下、信用取引で注意すべきことをまとめています。
<信用取引規制>
相場の加熱がおきると調整のため、まれに証券取引所が規制をおこないます。
増担保規制があると、その株を買うために必要な保証金が増え、買い圧力がへります。
新規売り停止があると、新しい信用売りができません。
<踏み上げ>
売り残の多い株の値段が上昇すると、信用売りしていた投資家がいっせいに買いポジション転換し、さらに株価があがります。
これは低い株価において、信用売りの投資家が多いと発生しやすいです。
またこの現象が起きると、買い圧力がまったくなくなります。
<追証(おいしょう)>
信用買いをしていて株価が下降、信用売りをしていて株価が上昇、という場合には、担保(保証金・株)を追加しなければならない場合があります。
特にレバレッジを大きくかけている場合は、追証の可能性はさらにあがります。
担保の追加ができなければ、証券会社が私達投資家のポジションを強制決済してしまいます。
この点については、FXとまったく同じです。
<その他の特徴>
信用買いでは、株主としての議決権がありません。
配当金はもらえますが、株主優待をもらうことはできません。
もちろん信用売りは両方もらえません。
株式分割の恩恵をうけることも無理ですが、かわりに株式分割で発生した子株をもらう権利を、他の投資家に権利入札価格で売ることができます。
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